4つ目の謎
それはコロナ禍のさなかの出来事。
仕事もイマイチのらず、片付けでもしようかと考えていたその時、珍しく事務所の電話が鳴りました。
普段、取引先とはFAXなどでやりとりしているため、電話が鳴ることはまれです。こういう場合、大抵は「ナントカを導入しませんか」のような営業の電話で、すぐに丁寧にお断りするのが常でしたが、この日かかってきたのは、先日ネットで目にしたWEBコンサル企業からでした。興味があって資料をダウンロードしていたのです。
電話の相手はとても物腰柔らかく、ハキハキとした好感の持てる若い男性です。「先日は弊社の資料をごらんいただいて……」と礼儀正しく、いいリズムでの営業トークが始まります。ウチには合わないサービスの印象ではあったものの相槌を打ちつつ耳を傾けていました。
よどみない説明は続きます。
「今回は4つ、ご提案がございます」と彼がトーンをちょっと変えて話しはじめました。
「1、ターゲットを決める。……2、…3、…」
と、そこまで来たところで
「お伝えしたこと、一緒に考えてさらに御社のコンテンツをより良いサービスにしましょう」と締めくくってしまったのです。
すべて出しきった充実感が電話口からも伝わってきます。4つ目は?などと話の腰を折るのも野暮なのか、あるいはわざと言わないのも彼の営業テクニックなのか、はたまた、単なる言い間違いなのか……と私の心はざわつきました。彼のなめらかなトークとは程遠い口調で「ちょ、ちょっと検討しますね」とお伝えして電話を切りました。
あれから3年以上経ちますが、幻の4つ目はいったい何だったのか知りたいなあと、今でもふと思い出すのです。