インドからの便り
「縄文土器に私は命を吹き込んだ!」——岡本太郎
どこで読んだか判然としないのですが、岡本太郎氏がこの言葉を発した当時、縄文土器というものは歴史史料であり、博物館にて保存され、科学的に研究される対象であったそうです。写真を撮るにしても正確に記録されるべきだと考えられていたそうです。
そんな中、岡本氏は書籍執筆のために自らシャッターを切って縄文土器をカメラに収めました。縄文土器を芸術品としてとらえ陰影をしっかりつけて撮影、その表情を浮き彫りにして躍動感や生命力を表現したそうです。冒頭の言葉は、彼自身がそのことを表現したものです(と記憶しています)。
私はInstagramやECに作家さんの作品を掲載するために撮影することがよくありますから、岡本氏の言葉は、いつも頭の中をぐるぐるとめぐり、考えさせられます。
器からのメッセージを受け取れているか。
見ていただく方にそれを届けられているか。
私は岡本氏のような技術などまったく持っていないので、半ば怯えるようにしながら、写真をInstagramやECに掲載する毎日です。
そんなある日、一通の英文のお問い合わせが届きました。はじめは迷惑メールかと思ったのですが読んでみると、送り主は「風の宮殿」があるインド・ジャイプール在住の陶芸家兼プロダクトデザイナーでした。
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Instagramを通じて、あなたの日本の本質を捉えた作品に感銘をうけました、是非貴社でインターンシップ、または見習いの機会はありますでしょうか。
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驚くことに、私の会社で学び働きたいということで、履歴書とポートフォリオを送ってきてくれたのでした。
受け入れたいのはやまやまでしたが、うちの会社は工房ではなく販売店であることをお伝えして、泣く泣くお断りいたしました。
沖縄のうつわが、国境を越えて海外のクリエイターに感動を与えたのです。撮影を頑張ってきてよかったとしみじみ感じました。
そういえば私は10年以上前にジャイプールを訪ねたことがあります。応募してくれた方がジャイプールで見かけたあの娘だったらすごいなぁと考えて、思わず笑顔になってしまいました。