デジタル遺品整理
毎日のように寄せられるお客様からのお問い合わせは、心温まるエピソードの集積です。
時にはスペシャルな依頼になったり、励ましの声になったりして、日々の仕事に新たな色彩を添えてくれます。
「青い模様が施された尺皿を150枚用意できますか?」。こんな依頼が突如舞い込みました。恐らく島中の窯元を駆け回って集めても足りない数で、納品までには相当な時間が必要となり、残念ながらお断りせざるを得ませんでした。
ある窯元で世間話をしている際にこのことをポロリと口にすると「俺に言えば、作ってやったのに」という親方の冗談混じりの叱責を受けた思い出もあります。恐らく実際にやれば納品までに2年以上かかると思うのですが、その心意気に感じ入ります。
当店に寄せられるお問い合わせの多くは、その人にとって身近なものがほとんどです。同じデザインのサイズ違いを求める声や、次の入荷時期はいつになるかのお尋ね、実店舗の有無に関する問い合わせなど。これらに応えることが、私たちがお客様に寄り添える数少ない方法だと思っています。
先日のお問い合わせでは、「デジタル遺品整理」という聞き慣れない言葉を知りました。
人生の最終章を迎えるにあたって、家族に申し送りするために、銀行口座や契約などを整理しておく「終活」が盛んですが、そのインターネット版、つまりネットのサービスを生前のうちに整理しておくことのようです。
「とても素敵な沖縄の器を丁寧に送り届けていただき、ありがとうございます。
食事が華やかになり、楽しい食卓の時間を過ごせました。
色々整理しないといけなくなりましたので、デジタル遺品整理のため退会したいと思います」
お礼ともに綴られたお便りから、私たちがお届けした沖縄の器が、お客様の日々の暮らしにどれほど寄り添えたかを感じられて、とても感慨深くなりました。これからも、お客様一人ひとりの生活に寄り添い、心温まる沖縄の器をお届けしていくことが、私たちの願いです。
そして、「デジタル遺品整理」の言葉も、オンライン上で事業を行っている私達としては知っておかないといけない言葉であり、勉強になりました。
このことをきっかけに、私もエンディングノートを購入しました。家族に対する想いや、これからの生き方を考えさせられたのです。
関わりのある方々への感謝を綴る場でもあり、愛する人への最後のメッセージにもなります。
「私の最後の晩餐は、あの工房の、あの器で食べたいな」なんてことを考えています。