タカさんのこと
とうとう社用車のエアコンが故障し、送風口からはぬるい風しか出なくなってしまいました。沖縄の真夏にエアコンなしで車を運転するのは、まるで移動式サウナのよう。じわじわと汗が噴き出して堪え難いものがあります。
こんな車のトラブルのとき、いつも頼りにしているのは高校時代の同級生、タカさんです。ひとりで整備工場を切り盛りしており、真面目で几帳面な性格は昔から変わらず、同級生たちからの信頼も厚い存在。今や私たちの間では、「車のことならタカさんに聞く」が暗黙の了解です。
ところが先日、そんな彼がふと「工場を閉めざるを得ないかもしれない」とつぶやきました。整備工場のある場所が区画整理の対象となり、移転を余儀なくされているのだそうです。新たな場所を探すのは容易ではなく、営業リスクも伴うため、苦渋の決断を迫られている様子でした。
タカさんはどうしたか。整備技術を生かし、船のエンジン洗浄・メンテナンスという新しい事業を始めたのです。毎朝漁港をめぐって漁師たちに声をかけ、マグロ漁船の積み荷や船の手入れを手伝いながら、少しずつ信頼を築いていきました。その努力には頭が下がるばかりです。
タカさんとの会話は、いつもどこか面白くて興味深いものです。
「県内で一番マグロを獲る漁船の釣り糸は、他と色が違うんだよ」といったマニアックな話や、「魚を1匹もらったはいいけれど、さばくのにえらく苦労した」「友人をカラオケに連れて行ったら、めっちゃ音痴で面白くて、いっぱい歌ってみんな喉が枯れた」と笑いながら語ってくれるタカさん。学生時代の懐かしい空気がよみがえります。
タカさんの誠実さと情熱、模索をつづける姿勢は、古い友人である私にとっても大きな励みです。
車を安心できるところに任せられるっていいですね。かかりつけの車屋さん、ありがたい存在です。