やちむん(陶器)
やちむんとは?
「やちむん」とは、沖縄の方言で 陶器・焼き物 を意味する言葉。「やち」は「焼き」、「むん」は「物」という意味があり、そのシンプルな響きの中には沖縄の豊かな文化が込められています。
琉球王国時代から続くやちむん(陶器)の歴史は、沖縄そのものの歴史です。東南アジア・日本本土との貿易を通じて磨かれた技術が、沖縄の独自文化と結びつき、今では唯一無二の焼き物(陶器)として親しまれています。那覇市の壺屋や読谷村などでは、今も多くの職人が伝統を受け継ぎながら、新たな魅力を生み出しています。
やちむん(陶器)の魅力は、その多彩なデザインにあります。釉薬を使わない素朴な「荒焼(アラヤチ)」と、色鮮やかな「上焼(ジョーヤチ)」。どちらも、沖縄の自然や文化を映し出すデザインが特徴で、魚紋や唐草模様は、縁起物としてギフトにも人気です。
やちむんの技法と紋様
Arabesque
唐草模様
唐草模様 沖縄 の やちむん の紋様の中でも、最も多いと言われている唐草文様。あちらこちらから無限に伸びた蔦が、永遠と長寿、子孫繁栄を表しているとされています。花を描いた菊唐草紋や蔦唐草紋など様々絵付けの種類がございます。
Fish Pattern
魚紋
やちむんの魚紋は、写実的な表現とは一線を画す、沖縄らしい陽気でユーモラスなタッチが特徴です。沖縄の焼物職人たちは、魚の形を自由な発想で描き、その輪郭を線彫りで引き立てることで、独特の表現を生み出してきました。沖縄の焼物を代表する陶工・金城次郎氏は、この魚紋を得意とし、数多くの作品に取り入れました。その影響により、「沖縄の器といえば魚紋」というイメージが定着したと言えます。現在の沖縄陶器の世界でも、この伝統は脈々と受け継がれています。また陶器に描かれる魚紋には、深い願いが込められおり、食に満たされる豊かさや、魚が沢山卵を産むことから、子孫繁栄を意味するとされています。
Itchin
イッチン(筒描)
スポイトのような道具で釉薬を絞り出して描くイッチン。
素地と違う色で描くのが主流です。
素朴でシンプルですが、料理との相性も良いです。
もともと布の染色に使う道具イッチンを用いて描き、その道具の名は染色や古九谷の絵付けにかかわった、久隅守景の号の一陳斎が名前の由来だという説もございます。
Embossed
印花(イングァー)
やちむんには「印花(イングァー)」と呼ばれる技法がよく用いられています。これは、陶器の表面に草花などの模様の型を作品に押しつける方法で、沖縄の陶器や焼物に独特の風合いを与えます。また、「花」とは「模様」という意味を持ちます。中国発祥の陶芸技法には「花」のつく技法が多く見られ、沖縄のやちむんにもその影響が色濃く反映されています。
Akae
赤絵
やちむんの赤絵は、中国や日本本土の影響を受けて発展しました。特に、17世紀に薩摩藩を通じて伝わった技術が大きな影響を与えたとされています。やちむんの赤絵は、白い素地の上に赤色を主体とした上絵付けを施す技法です。上絵付けを施した後、低温で焼成します。これにより、鮮やかな色彩を保つことができます。県花であるデイゴやブーゲンビレアをモチーフにした色鮮やかな絵付は華やかです。
Dotting
点打
点を打って描く紋様で、伝統的な柄として知られています。飽きのこないデザインですので、どんな食材との相性も抜群で、お料理の魅力を引き立てるやちむんの器です。水玉とは違い、均等ではなく自由に点を打つことで、沖縄のやちむん特有の温かみと個性を表現しています。
Brush marks
刷毛目(ハケメ)
ぬくもりのある刷毛の印象は、多くの方に好まれる器の代表格です。朝鮮半島から入った技法で、希少な白磁に似せて、素地に白い土をかけたのが、はじまりだそうです。刷毛を使って白釉で流れるように描くのが刷毛目。藁を束ねて作った刷毛などで化粧土をほどこし濃淡やかすれ具合が味に!陶工の手さばきの優美さが表れます。
Tobikanna
飛鉋(とびかんな)
工具の刃先をつかって、連続した削り目をつける技法ろくろを回しながら、工具の刃先をつかって化粧土を削ってゆきます。ロクロの回転の速さや工具の角度など、刻む間隔を調整しています。やちむんは、小鹿田焼などに見られる器全体に施すというようりも、一部分だけに施したりする事が多いようです。
Finger Drawing
指掻き
釉やくを、指をつかって掻いたりして描く技法。釉の濃淡や大胆に流れる美しい模様が光のあたり具合で表情をかえる。熟練の技が光る技法とも言えると思います。
Comb Drawing
櫛掻き
櫛掻きは、やちむんの表面に櫛型の専用の道具を使って線を刻み、独特のテクスチャーを生み出す伝統技法です。素朴で温かみのある表情が特徴的で、伝統的な手法と現代的なセンスが融合することで、やちむんの新たな可能性、やちむんの魅力を最大限に引き出しています。
Inlay
象嵌
沖縄の焼物(やちむん)の中でも、特に高度な技術を要する装飾技法として知られているのが「象嵌(ぞうがん)」です。芸術性を最も印象的に表現する手法の一つとして、多くの陶芸愛好家から高い評価を受けています。素地に溝や模様を彫り、そこに異なる色の土を丁寧に嵌め込んでいく繊細な技法です。文様や絵柄を表現した後、全体に釉薬をかけて焼成することで、独特の深みのある表情が生まれます。
Uchikake
打掛釉
打掛釉は、釉薬を器物に塗布する方法の一つで、釉薬を適度な濃度に調整し、器物を手に持つか、または轆轤に載せ釉薬を含ませた刷毛や柄杓を使って、器物に釉薬をかける技法
やちむん(陶器)の名称
マカイ
マカイという言葉は沖縄の方言で「お碗」という意味で、お茶碗や汁椀・丼などのこと
ワンブー
ワンブーという言葉は沖縄の方言で「鉢・ボウル」という意味です。。特に、口径に縁がついた鉢を指す時に使用しています。
安南鉢
古来より陶磁器の交易は、アジアの文化交流において重要な役割を果たしてきた。その代表的な例として挙げられるのが「安南鉢」である。この名称の「安南」は、現在のベトナムの古称であり、かつて中国王朝がベトナム北部を指して用いた呼称に由来している。
安南鉢の特徴は、その実用的かつ優美な形状にある。緩やかに広がる口縁部と安定感のある高台を持ち、深さのある胴部は、様々な料理を盛り付けるのに適している。この形状は、ベトナムの伝統的な食器の特徴を色濃く反映しており、東南アジアの食文化との密接な関係を示唆している。
カラカラ
伝統的な酒器の一種です。主に泡盛を飲むためのものになります。
名前の由来にも様々な説があり、カラカラには内部に取り出せない陶製の玉が入っており、空になると振るとカラカラと音がするという説や、「貸せ貸せ」がなまって「カラカラ」という説もあります。
チューカー(土瓶)
もともとは泡盛用の土瓶を「ちゅーかー」と呼んでいました。現在では主にお茶用の急須として使用されています。
チューカーという名称は、中国語の「酒家」に由来するという説があります。一説によると、鹿児島(薩摩焼)の「ちょか」の語源になっているとも言われています。
抱瓶(だちびん)
抱瓶は、琉球王国時代に発展した携帯用の酒器です。中国や朝鮮の影響を受けて、沖縄で独自に発達したとされており、紐を通して肩から下げたり、腰にぶら下げて持ち歩くことができます。
嘉瓶(ゆしびん)
お祝いの席で酒を入れて使用されることから、幸福や祝福の象徴とされています。「ゆし」は「かりゆし」(めでたいこと)に通じる言葉で、縁起の良い器とされており、泡盛を詰めて相手に贈り、祝いが終わると持ち主に返されるという習慣もありました。
按瓶(あんびん)
土瓶や急須に似た形をしていますが、持ち手が本体と同じ陶器で作られています。お茶・水を入れるために使用されていたとされています。
「按」という字は、かつての沖縄の高位の役職「按司」(あじ)に由来しています。按司という身分の高い人々が集まりなどで使用したことから、この名前がついたとされています。
厨子甕(ずしがめ)
厨子甕(じーしがーみ、ずしがめ)は、沖縄を中心とした南西諸島地域で使用される伝統的な遺骨を納める骨壺です。
厨子甕の起源は15世紀頃まで遡ると考えられており、当初は中国福建省産の輝緑岩製の石厨子や漆塗りの板厨子が使用されていました。1970年頃まで洗骨の風習と共に使用されていましたが、その後火葬の普及により使用方法が変化し、もちろん現在でも祖先の骨を納めるために使用されますが、芸術的な価値も認められインテリアとしても使用されています。