シーサー(やちむん:陶器)の作り方
沖縄の伝統工芸として知られるシーサー(やちむん)は、主に「手びねり」や「型押し」といった技法で作られています。ここでは、壺屋焼など伝統的な焼き物の手びねりでの、シーサー作りの、その工程を紹介します。
粘土の準備
沖縄本島の土を使い、複数種類をブレンドして粘土を作ります。伝統工房では土の選定からこだわります。
主な材料と道具
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沖縄の土(粘土)
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ヘラ、竹串などの細工道具
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「どべ」(粘土を水で溶いた接着剤)
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焼成用の窯
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粘土を分ける
粘土を胴体、頭、パーツ(目、耳、鼻、たてがみ、しっぽなど)用に分けます。
手びねりで成形

筒状にした粘土で胴体と前足・後ろ足を丁寧に形作ります。立体感、躍動感のあるように少しずつ体に膨らみをつけています。粘土の厚みは均一に保ち、継ぎ目に隙間が生じないよう丹念に練り合わせます。(口を開けたオス、閉じたメスが一対)。
陶工は猫など動物の動きをじっくり観察し、生命力のあるしなやかな体を表現します。
パーツ作りと接合

目や耳、鼻、たてがみ、しっぽといった細かなパーツは、一つひとつ丁寧に作り出されます。陶工はヘラやどべと呼ばれる接着用の粘土を巧みに使い、命を吹き込むかのように、慎重にパーツを取り付けていきます。
特に「目」を入れる瞬間は、シーサーに魂が宿る大切な工程。熟練の陶工であっても、この瞬間だけは集中して臨むと言われています。それほどに、目の表情ひとつでシーサー全体の印象が決まるのです。
仕上げには、竹串やヘラを使い、全身に繊細な模様や装飾が施されます。巻き毛の曲線や顔に刻まれるしわは、単なる装飾ではなく、長年受け継がれてきた意匠と祈りの象徴。こうして、力強さと温かみをあわせ持つ、シーサー(やちむん)が姿を現していくのです。
乾燥・焼成
成形後は1ヶ月半ほど自然乾燥させます(工房や季節による)。十分に乾燥したら窯で焼成します。
仕上げ

焼き上がったシーサー(やちむん)に釉薬や絵付け施したり、素焼きのまま仕上げたりします。
まとめ
伝統的なシーサー(やちむん)作りは、作り手の思いと沖縄の歴史が呼応しながら生まれる、祈りのかたちです。職人たちは、一体一体と向き合い、「魂を込める」ようにして手を動かします。その眼差しと丁寧な手仕事から生まれるシーサーは、すべてが異なる表情と佇まいを見せ、まるで生き物のような存在感を放ちます。沖縄の自然と歴史、そしてそこに生きる人々の祈りと願い。そのすべてが込められたシーサーは、今も変わらず、家々を見守り続ける沖縄の守り神として、人々に寄り添い続けているのです。