やちむん(陶器)の釉薬について
沖縄の陶器「やちむん」は、素朴な美しさと手仕事ならではの温もりで多くの人々を惹きつけています。その魅力を余すことなく表現するうえで欠かせないのが、沖縄の自然素材を活かした多彩な釉薬です。各工房や職人の感性が加わることで生まれる独特な色合いは、一つひとつの器に個性を引き立たせています。
代表的な釉薬の種類と特徴
1. シルグスイ(透明釉)
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主な素材:サンゴの消石灰、具志頭長石、もみ殻、白土
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特徴:素地の素朴さを引き立て、穏やかな透明感のある艶を持つ。
2. オーグスヤー(緑釉)
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主な素材:真鍮、もみ灰、ガジュマルの灰、土灰、白土
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特徴:深みのある緑色から青みがかった色まで、配合や焼成条件により変化する。
3. クルグスイ(黒釉)
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主な素材:ニービ(砂岩石の一種)、マンガン、琉球松の灰
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特徴:重厚感と静かな佇まいをもたらす深い黒色。皿の裏や掛け分け、下地に使うことが多い
4. アカーグゥー(飴釉)
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主な素材:マンガン、琉球松の灰、具志頭長石など
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特徴:温かみのある飴色。
5. ミーシルー(キビ乳白釉)
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主な素材:サトウキビの灰
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特徴:やさしく柔らかな乳白色。すべすべしている。

6. コバルト釉・呉須釉
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主な素材:酸化コバルト、マンガン、真鍮、花群青(とても貴重)
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特徴:鮮やかな青色。

7. 灰釉
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主な素材:植物や木材の灰、赤土
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特徴:予測不能な自然の窯変による独特の風合い。

まとめ
やちむんの釉薬は、沖縄の自然環境や職人たちの技術と感性が融合して生まれた文化の結晶です。釉薬が生み出す多様な表情を楽しむことは、沖縄の豊かな自然や暮らしをより深く感じることにもつながります。やちむんの器を手に取り、ぜひその奥深い魅力を味わってみてください。
やちむんの釉薬ができるまで
やちむんに使われる釉薬(うわぐすり)は、一見シンプルですが、実際には非常に繊細な工程を経て作られます。素材には、もみ殻、木、サトウキビ、ガジュマルなど沖縄ならではの植物灰や、土地特有の長石、赤土が使用されます。
素材の精製
集めた灰は、伝統的な石臼や現代のミル(粉砕機)で丁寧に粉砕されます。その粉末を水に溶かし、攪拌した後、静かに寝かせて不純物を沈殿させ、上澄み液を取り分ける「あく抜き」という作業を繰り返します。手間暇を惜しまないことでやちむん独特の深みが生まれます。

釉薬の配合と焼成
釉薬ごとに素材の配合は異なります。例えば「シルグスイ(透明釉)」はもみ殻の灰とサンゴの消石灰・長石等を調合し透明感を持たせます。「オーグスヤー(緑釉)」は真鍮の粉と籾灰を加え団子を作り乾燥させ1度1000℃程度で焼いた後、ミルなど粉状にしてガジュマル灰や透明釉などを混ぜあわせる。「アカーグゥー(飴釉)」はマンガンの配合分量で濃淡をを生み出します。
工房や作家ごとに釉薬の配合や焼成方法は異なり、その製法は秘伝とも言われています。また、自然素材を用いるため、その年の気候や土壌の影響で素材の質が微妙に変化します。職人は豊富な経験をもとに、その素材の特性を見極め、絶妙な調整を加えていきます。

時間をかけた手仕事の価値
ひとつの釉薬が完成するまでに1〜2ヶ月もの時間を要することも珍しくありません。しかし、その労力と時間が、やちむん独自の美しさと価値を生み出します。現代社会において、このような手間のかかる伝統的な手仕事は、より一層貴重なものとなっています。
まとめ
やちむんの釉薬は、沖縄の自然環境や職人たちの技術と感性が融合して生まれた文化の結晶です。釉薬が生み出す多様な表情を楽しむことは、沖縄の豊かな自然や暮らしをより深く感じることにもつながります。やちむんの器を手に取り、ぜひその奥深い魅力を味わってみてください。