そんなもんだよ
先日、とある取引先と話をしていたところ、「昔はホテルとか企業からよく大口の注文をもらったものだけど、最近はめっきりそういったものは無くなったなぁ」と、なんだか懐かしむような口調で言われました。そういう景気の良い時代を過ごした記憶のない私にとっては、人ごとに聞こえてしかたありません。
その話をした数日後、県内で行われる国際会議の記念マグカップを沖縄のやちむんで制作したいという問い合わせが入りました。最近ではあまり聞かない大口の依頼に驚きつつも、通常は1年程度の準備期間が必要なため、依頼に応じるのは難しいと伝えました。しかし、依頼主はどうしてもやちむんでグッズを作りたいと強く希望しており、なんとかご要望に応えようと動き始めました。
数社の取引先に相談したところ、唯一、独りで工房をしている方が話を聞いてくれることになりました。依頼主には状況や予算を説明し、数点のデザインを提案しました。しかし、国際会議ということで参加国も多数になり運営者側の決裁が中々おりず、最終的には残念ながら私たちが断られる形になりました。
「大口の注文」という古き良き響きに胸をときめかせたものの、現実の難しさに直面することになった出来事でした。
相談にのってくださった親方には、申し訳ありませんが今回は受注できませんでしたと説明にあがりました。嫌な顔をされるかと思ったのですが「そんなもんだよ、でも請け負えるというメンツは保てたんじゃない。次につながるよ」と、とても嬉しい言葉をかけていただきました。我々のことまで考えてくださって、感謝しかありませんでした。
またこういうチャンスがめぐってきたら、取引先と一緒にしっかり実現したいなと思った次第です。