琉球ガラスの作り方
沖縄を訪れたなら、一度は手に取ってみたくなる「琉球ガラス」
柔らかく煌めき、ひとつとして同じ模様のないその美しさに、心を奪われた経験がある方も多いのではないでしょうか。
琉球ガラスは、沖縄ならではの自然や歴史を背景に生まれた伝統工芸です。その美しさの裏には、職人たちの確かな技と、ガラスという素材に向き合う繊細な工程があります。
この記事では、「琉球ガラスの作り方」について、体験型工房で実際に行われているプロセスをベースに、ご紹介いたします。
1. 「下玉」づくり
すべての始まりは、炉(ろ)から吹き竿に「下玉」と呼ばれるガラスをすくい取ることから。
一見、簡単そうに思えるこの工程。実はこの最初の玉が、のちの仕上がりを大きく左右する要になるそうです。吹いたときに色むらが出ないよう、厚みや形を均一に整える必要があるため、見た目以上に繊細な工程です。

2. ガラスを巻き、サイズを整える
種玉のままでは作品には小さすぎます。炉に戻し、再びガラスを巻き取って大きさを調整していきます。
このとき「スキ」と呼ばれる透明のガラスを巻くことで、色の濃淡をコントロールすることもできます。透明なガラスを重ねれば、奥行きのある柔らかな色味に。
必要な分量に達するまで、何度も少しずつ丁寧に重ねていくことが、あの美しい佇まいへとつながっているのです。
3. 型に吹き込む、または「宙吹き」する
ここからは、ガラスらしい形をつくるステップ。「型吹き」といって、型の中に吹き込む方法と、「宙吹き」と呼ばれる、型を使わず空中で成形する技法があります。
型吹きは体験工房でも体験可能な工程。吹き竿に口を当て、息を送り込むと、ガラスがふくらみ、型の中で少しずつ形になっていきます。

4. 「くびれ」をつくる - 切り離しの準備
成形が進んだところで、次は吹き竿から切り離すための準備です。ガラスがまだ柔らかいうちに、「ハシ」と呼ばれる道具で、切り離し用のくびれ(スジ)を入れます。

5. 底の形を整え、安定感をつくる
ガラスを立てたときにぐらつかないよう、底の形状を整えるのがこの工程です。さらには、グラスの中心部をわずかに凹ませることで、接地面を安定させます。
ここまでのステップで、すでに「ガラスの器のかたち」が見えてきています。

6. 切り離し ポンテ竿の登場
琉球ガラスの底となる部分の中心にポンテ竿を接着し、溝の部分に水をつけて「カーン」という音とともに切り離します。

7. グラスの口を整える
切り離された部分は成形窯であぶり、柔らかくなったガラスを「テッポウ」と呼ばれる道具で器を回し調整し整えていきます。
この工程では職人の繊細な技術が発揮され、口部の形状が決まっていきます。熱の加減と道具の操作が、最終的な美しさを左右します。

8. 「ポンテ跡」の処理
仕上がったグラスをポンテ竿から切り離すと、そこには「ポンテ跡」と呼ばれる小さな痕が残ります。
これをバーナーで炙りながら、なじませることで、器としての形が整う工程になります。

9. 除冷炉へ 緩やかな冷却
最後に「除冷炉(じょれいろ)」と呼ばれる特別な炉に入れて、一晩かけてゆっくりと冷ましていきます。急激な温度変化に弱いガラスにとって、このステップはとても重要。1000度近い成形温度から40度前後まで、じっくりと時間をかけて冷ますことで、ひび割れなどを防ぎます。

おわりに
琉球ガラスは、沖縄の歴史と文化が凝縮された工芸品といえます。アメリカ軍の飲料瓶を再利用したことから始まったとされるこの伝統工芸は、現在も職人たちの手によって発展を続けています。
一つ一つ手作業で作られる琉球ガラスには、機械生産では決して真似できない温かみと個性があります。それは、長い時間をかけて培われた技術と、素材に対する深い理解、そして何よりも「美」を追求する職人の情熱から生まれるものです。